あおもり昆虫記
ヒメギス

 鳴く虫はキリギリスの仲間とコオロギの仲間に大別される。キリギリスの仲間で、本県の代表格は、ヤブキリと、このヒメギスと思う。この2種は、里山あたりに行くと県内広く見ることができる。

 そんなキリギリス、知らないぞ、と言う人がいるかもしれない。それはもっともなことで、この虫は、黒褐色の地味な色をして小さめ、鳴き声も地味。ジリリリと短く鳴く。成虫でも羽が短く、お世辞にもスマートとはいえない(たまに羽の長い個体がいる)。だから、虫好きでないと認識されない虫だ。草むらに多い。しかも、どういうわけか単独でいることは少なく、集団でいることが多い。1匹見つけると、近くに数匹いるということがよくある。

 1995年5月20日、ヒメギスの幼虫が青森市の自宅の庭に姿を現した。へ〜っ、市街地中心部の近くでもヒメギスはいるんだ、と驚いたが、そのまますっかり忘れていた。

 が、ヒメギスは庭にずっと居続けたようで、無事成虫になった個体がその年の7月14日から鳴き始めた。そして、2匹が至近距離で8月5日まで23日間、1日も休まず昼も夜も鳴き続けたのだった。昼も夜も鳴いて、いったいいつ眠るんだろう、と思うほどのべつまくなし鳴き続けた。

 同じ場所でこんなに長く鳴き続けるものだろうか。わたしの素朴な疑問をキリギリスの専門家で弘前市に住んでいるMさんにぶつけてみた。するとMさんは「そうです」といとも簡単に言い切った。キリギリスの仲間は、場所との結び付きがものすごく強いという。まるで猫みたいだ。新鮮な驚きだった。

 そのあとのMさんの質問には参った。「ヒメギスは広い草地に生息するんです。ということは、村上さんの庭は大草原のように、よっぽど広いんでしょうね。大豪邸なんでしょうね」。冷や汗が出た。「庭は、猫の額より狭いんですよ。わたしの庭は造成以来、1回も手を加えておらずヨモギなどが生え放題。だから“自然度”が高く、そのためヒメギスが訪れたのではないでしょうか」。Mさんの“邪推”を否定するのに必死だった。敷地30坪の豪邸なんてあるわけがない。

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