あおもり昆虫記
ケラ

 当たり前のことではあるが、子供たちは、本能的に性について強い関心を持っている。

 子供のとき、悪ガキたちとこんな遊びをした。ケラの背中を指でつまみ「おめえのチンチンど〜のくらい?」と言うと、ケラは平べったい両手を広げる。ガキたちは「このくらいだってサ。ケケケケケ」と言って笑いころげたものだった。図体の大きいガキ相手の時は、ケラの背を強くつまみ「どーのくらい?」とやると、ケラは苦しがって、さらに両手を大きくばたばたと開げ、またまたわたしたちは死ぬほど笑ったものだった。

 最近までこの遊びはわたしたちだけのもの、とばっかり思っていた。ところが、ケラについて書いた東京出身の人の文にも三重県出身の人の文にもこの下りが出てくるのを見つけ、わたしは仰天してしまった。誰に教えられたわけでもないのに、どこの子供たちも同じ遊びをするとは。所変わっても考えることは同じ…。なんだか不思議な気持ちになったものだった。

 さて、このケラ。ほとんどトンネル暮らしをしている。土を掘るシャベル状の両手も体つきもモグラそっくり。全く穴掘りの名手だ。学名グリロタルパ属もモグラのようなコオロギという意味だ。

 雄はビーッと鳴き、昔の人はミミズが鳴いている、と勘違いしたが、実はこの声の主はケラ。俳句の秋の季題に「蚯蚓(みみず)鳴く」があるから笑ってしまう。

 中国に「螻蛄(ケラ)の五技」という言葉がある。約2000年前、筍子が言ったもので「ケラは、飛び、登り、泳ぎ、掘り、走ることができるが、どれもまともでない」と例え、器用貧乏の人をこきおろした。

 たしかにそうかもしれないが、ケラが好きなわたしは、すこしムッとする。だいたい、けがらわしいものを「虫ケラ」と言うのも気に入らない。両手を広げる姿をケラの「お手上げ」姿に見たてたのか、フトコロがすっからかんの状態を「オケラ」と言う。ケラには全く気の毒な話ばかりだ。

 しかし、この愛すべき虫も近年、姿を見ることが難しくなってきた。子供たちのあのチンチン遊びが無くなるのはもうすぐ−いや、既に無くなっているのかもしれない。

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