あおもり昆虫記
チャバネゴキブリ

 1986年の夏、農業青年たちと一緒に米国に3週間出張し日本に帰った時、彼らと東京・上野のアメ横の小汚ない大衆酒場で飲んだ。その二階。思わず目を疑った。

 畳の上、テーブルの上で、チャバネゴキブリの大運動会が繰り広げられていたのである。なまはんかな数ではない。数えられないくらいの数である。が、ものともせず、座布団に座った。

 目の前に箸立て。箸には青カビが生えていた。悪い予感がして、箸立てから、箸をまとめて抜き取った。すると約10匹のゴキブリが、あわてて飛び出した。箸立ての底には、ゴキブリの糞がいっぱい。う−ん、参った。

 東京では、めちゃくちゃに多いチャバネゴキブリだが、北国青森では意外なほど少ない。スナックをやっている友人に「いないか?」と聞いたが「太郎ちゃん、花子ちゃん(彼はゴキブリのことをこのように言う)は店にはいないよ」。意地になって探した結果、青森市内の喫茶店でようやく数匹見つけた。

 そもそもゴキブリは南方系の昆虫。北国に少ないのは当然といえば当然。枯れ葉の下や木の割れ目の中などを棲み家にしているが、人間が家を建てたため、家の中に侵入するようになった。ゴキブリだって屋外より屋内でぬくぬくする方がいいに決まっている。とはいっても、家の中で生活しているゴキブリの種類は意外に少ない。

 その中でチャバネゴキブリは“屋内型ゴキブリ”の代表格だ。世界共通の室内害虫で飲食店や旅館の調理場に多く、また木造家屋より鉄筋ビルが好きだ。屋内型ゴキブリの中で最も殺虫剤に対する抵抗力がついており、とくに塩素系薬剤に強い個体が増えている、といわれる。

 ゴキブリの化石を見ると、現在の姿とほとんど違わないことに気づく。古代から今の姿が確立され、長期間繁栄を続けてきたわけだ。その点で、生きた化石と言うこともできる。これほど長く繁栄できたのは、ひとえに食べ物に好き嫌いが無いからだ。哺乳類で繁栄している人間だって繁栄の秘密は雑食。肉しか食べられなかったら、これほど繁栄しなかっただろう。

 ゴキブリは、壁に体を接しながら歩く習性がある。だから、わなを仕掛ける時も、璧に接した床に置けばよい。

 童謡「コガネムシ」のコガネムシは実はチャバネゴキブリ、という説があるが、その信憑性は分からない。

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