あおもり昆虫記
アオフキバッタ

 「アオフキバッタとヤマトフキバッタを見に行きませんか?」と2004年の8月、Iさんから声がかかった。Iさんとは虫の好みが合い、図鑑では手に負えない虫を採集したり撮影したときは、Iさんに名を調べてもらっている。いわば、わたしにとって虫のお師匠さんみたいな存在の一人だ。

 そのIさん、前年に南郷村でアオフキバッタの生息地を見つけたものの、満足のいく写真が撮れなかったということで、「リベンジしなきゃ」と張り切っている。さらに「階上岳や八戸市にヤマトフキバッタがいるので、それも見に行きましょう」。わたしは、その2種をまだ見ていない。二つ返事で同行をお願いした。

 まず、南郷村へ。「昨年は、このあたりに、アオフキバッタがいっぱいいたんだよね」と言うIさんの後ろをついて行ったら、いた、いた。羽の無いのが特徴のアオフキバッタが数匹いた。「昨年より数が少ないなあ」とIさんは不満顔だが、当方は写真が撮れれば問題なしの大満足だ。それにしても、青森県では県南地方の限られた場所にしかいないというアオフキバッタが、前年と同じ場所にいるなんて! その律儀というか生真面目というか、正確さに驚かされた。逆に考えると、あまりあちこち行動範囲を広げず、同じ場所に発生するため、分布も限られているのだろう。

 次に階上岳の山頂付近に移動。狙い通りにヤマトフキバッタを見ることができた。アオフキバッタは羽が無いが、ヤマトフキバッタは逆に羽が長く左右の羽が一部重なっているのが特徴だ。これも意外に簡単に見つけることができ、ラッキーだ。なんだか、ついている。というより、案内人が優れているのだろう。

 そして八戸市に向かった。Iさんの知り合いの虫研究家が以前、そこでヤマトフキバッタを2匹採集したので、その確認に行こう、というわけだ。
 わたし「どこへ行くの?」
 Iさん「八戸市のある中学校の裏山ですよ」
 わたし「ん? 聞いたことがある場所だぞ!」

 2004年6月6日、Mさん、Tさん、わたしの虫友おじさん3人組が、八戸市でアオハダトンボを探した。Mさんがつかんできた「八戸市のある中学校の裏山で毎年6月の第1日曜日に必ず、アオハダトンボが1匹現れる」というあやしい情報をもとに3人で青森から八戸に出かけたのだ。2004年は、6月6日がその日だった。おじさん3人組が探した結果、本当に1匹のアオハダトンボがあらわれたため、みんな腰を抜かすほど驚いたのだった。

 今回、情報をもとにIさんがヤマトフキバッタを見るため目指す場所は、なんと、アオハダトンボのときとほぼ同じ場所だったのだ。この妙な縁。なんと表現すればいいのだろう。Iさんが車を進める農道も2カ月前、アオハダトンボ探しで何回も通ったところだ。「知ってる、知ってる。ここに来たことありますよ」と興奮気味に話すわたし。Iさんは、「なぜ知っているんだろう」とでも言いたそうな、けげんな顔をしている。

 適当な場所に車を止め、2人でヤマトフキバッタ探しに歩き始めた。間もなく、道端の葉の上にフキバッタがとまっているのをわたしが見つけた。「これ、これ。これがヤマトフキバッタですよ」とIさん。「幸先がいいぞ。1匹がいるということは、ほかにもいるはずだ。探しましょう」と言うIさんとともに、ヤマトフキバッタ探しに熱を入れた。

 ところが、である。見つけたヤマトフキバッタは、なんとこれ1匹だけだったのだ。アオハダトンボのときも見たのは1匹だけだった。そして今回のヤマトフキバッタも1匹だけ。この八戸市のある中学校の裏山では、めざす虫は1匹しか見られないのか。あまりの“共通点”に、わたしはこの現象を「○○中学校裏山伝説」と勝手に呼ぶことにした。

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