あおもり昆虫記
ハラヒシバッタ

 青森県庁の知人と雑談していた時のこと。話題がヘビに及んだ。彼は昔を懐しむように話し始めた。「小学校のころ、ヘビをおもちゃにして遊んだものです。ヘビの皮を頭からむくと、きれいにむける。むいた皮で木の枝をくるむとまるで蛇皮のステッキそっくり。『ステッキだ、ステッキだ』と面白がったものです」

 わたしは、この話がよくわかる。彼はもちろん、わたしが子供の時も、子供たちのおもちゃは、カエルとか虫たちだった。邪気の無い残酷さをいかんなく発揮する子供たちは、たいていの場合、おもちゃを死に至らしめたものだった。

 しかし、逆説的だが、生き物とそのようなつき合いを経験した人でなければ、自然を真に大切にする心が形成されないのでは、と信じている。最近の過激的な自然保護論者の弁が、どことなくうそっぽいのは、彼らが虫1匹すら殺したことがないためだろう。

 さて、わたしの子供のときは、というと、春先に虫の“監獄”をつくるのが好きだった。雪どけ直後の暖かい日。陽気に誘われクモやさまぎまな虫が姿を現わしてくる。当時、家の周りには板ガラス片が多く散らばっていた。地面を少し掘り、ガラス片をかぶせると“監獄”のでき上がり。その中に虫を入れ、わが身の不運を呪う虫たちをガラス越しにのぞき込み、悦に入ったものだった。もちろん、虫を釈放してやるなどという殊勝な気持ちはさらさら無かった。

 “監獄”の住人の常連は、1cm足らずの小さなハラヒシバッタだった。

 春先から晩秋まで県内どこにでもいる普通種。真上から見ると、体型が菱形をしている。しかし、あまりに普通種ゆえ、研究者からは見向きもされていない。なぜ個体によって羽の模様が極端に違うのか、なぜ人里に多いのか、1年に世代が何回交代するのか−。どれ一つとして解明されていない。

 普通種にしては謎が多いこの虫を路傍で見ると、今でもあの“けがれなき残虐心”を思い出す。

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