あおもり昆虫記
ミカドフキバッタ

 低山地を歩くとき、道の両側の草に注意を払っていると、あまりすばしっこくない大きめのバッタが目に入ってくるだろう。羽が短いから、幼虫と思う人がいるかもしれないが、これでも大人だ。

 このバッタはかつて、全部がミヤマフキバッタ(深山蕗バッタ)という和名でくくられていた。が、地域によって微妙に違いがあることが分かり、20年ほど前から新しい名が付けられた。フォッサマグナから北は、だいたいミカドフキバッタだが、西日本は、キンキフキバッタをはじめキイフキバッタ、シコクフキバッタ、セトウチフキバッタ、ヒョウノセンフキバッタ…などやたら細かに地域名がつけられた。このバッタの仲間は、幼虫時代はフキなどの葉っぱを集団で食べ、見事なまで穴だらけにしてしまうが、成虫になると単独でいることが多い。

 ところで、なぜバッタにミカド(帝)というおそれおおい名が付いたのか。それは、ミヤマフキバッタに付いていた、俗にいうところの学名(属名・種名)のうち種名の「ミカド」をそのまま和名に転用したためだ。

 ではいったい、命名者の外国人学者は、どのような気持ちでバッタを帝に見立てたのだろう…。いかにも鈍重で、エレガントでもなく、スローモーなバッタの、どんなところから帝を連想したのだろうか。さっぱり分からない。

 さて、フォッサマグナから北はだいたいミカドフキバッタだ、と書いたが、東北地方の山地と北海道にはよく似たハヤチネフキバッタがいる。1979年、岩手県早池峰山で採集された標本をもとに新種に記載された。

 青森県では標高700−800m以上の山地にすむ、と調べられている。ところがわたしは標高わずか200mの沢筋で見つけ撮影した。フキバッタを研究している黒石市のIさんは、これには驚いたようで、「高い所で朽ち木などに産卵、大雨などで朽ち木が下流に流されたため、標高の低い所で一時的に発生することもありうる」と推理をはたらかせている。

 フキバッタの仲間で特徴的なことがある。それは、特異な死に方をすることだ(他のバッタも同様の死に方をしているが、とくにフキバッタに顕著)。山地の道を歩いていると、植物の茎の高い所で、茎を抱きかかえるように死に、変色しているフキバッタの姿を数多く目にする。

 これは、ある菌に冒され死んだものだ。しかし、疑問は残る。なぜ何匹もそろいもそろって植物の茎に登り、高い所で死ななければならないのだろう。示し合わせたわけでもないだろうに。

 学者の説によると「菌が自分の胞子を広く飛ばすためにバッタを高い所に登らせる」とか。菌の立場からすればそうだろうが、では菌はどんな技を使ってバッタに“木登り”させるのだろう…。考えてみれば、すさまじい話だ。

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