あおもり昆虫記
メスアカケバエ

 メスアカケバエ(雌赤毛蝿)。雄は真っ黒けだが、雌の胸や腹がオレンジ色のため、この名がついた。足は毛むくじやらで羽も黒く、おどろおどろしい容姿だが、人に危害を加えることなく、幼虫は落ち葉などを食べて育つおとなしい虫だ。が、オレンジ色が鮮やかな雌を野外で見ると、やっぱりすこし、どきっとする。

 このケバエ類の生態は、日本ではあまり調べられていないが、米国のもの好きな学者が詳しく調べており、なかなか興味深い。米国では、Love Bug(愛の虫)とか、Honey Moon Fly(新婚旅行蝿)と呼ばれ、日本の不粋な「毛蝿」とは全然違う受けとめ方がされている。愛の虫とは、あやしはずかしのかんじだが、交尾姿が人目につくことから、このような呼び方がされている。

 写真の通り、何の変てつもない交尾のように見えるが、米国の学者の研究によると、この交尾の裏には深い深い読みと策略があるという。とはいっても、これらは本能に基づく行動で、虫が頭で考えながら行動しているわけではないのだが…。

 雄は集団で群れ飛ぶ。俗にいう蚊柱だ。この蚊柱の下を体の大きい雄が占領し、上は小さい雄で占められている。なぜか。地面から出て来る雌を捕えて交尾するチャンスを得るには、蚊柱の下にいる方が有利だからだ。雌にしても大きく強い雄の方が種の保存のために都合がよい。苛酷な交尾が待っているのだから。

 精子は半日以内に雌の体内に渡されるが、雄はなんと2−3日もくっついたままでいる。雌が2回以上交尾すると、最後の交尾の精子が卵子と受精するという現象を防止するための作戦だ。つまり、他の雄に交尾させないため、いつまでもくっついているわけで、体を張って“寝とられ防止”の貞操帯となっているのである。愛の虫と呼ばれるゆえんだ。交尾中、雌は花の蜜などを吸うが、雄は逆向きだからロクに食事もできない。命がけの交尾に耐えるには、やはり雄は強く大きくなければならないのである。

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