あおもり昆虫記
アカイエカ

 とにかく1994年は、殺人的に暑かった。朝から夜中まで、24時間中「あぢあぢあぢあぢあぢ」と断末魔の叫び声を上げ、しまいにはぐったり。「もう暑くて何も言う気ないもんね」と板の床に寝転がってすこしでも涼をとり、金属で出来た丸いくずかごに足の裏をぴつたりくつつけ、むなしくもいじましくも涼を求め続けたものだった。

 特に、飲んで夜中に帰り、玄関のドアを空けたときの、むわ〜っとくる、あの熱気。あれはたまらん。アルコールが、一気に体を巡り、ほとんど悪酔い状態になる。

 で、あまり家の中が暑いので、ついトイレに入った。すると、白いクロスにアカイエカが止まっているではないか。カも「暑くて動きたくないもんね」という感じで、ピクリとも動かない。わたしは、酔いでよろよろしながら、おもむろにカメラを取り出し、ストロボを設置。再びトイレに入ってもカはじっとそのまま。酔眼でも楽々ピントを合わせることが出来た。

 高校、大学の先輩で、いま京都にいるカの専門家Kさんが、わたしによこしたはがきによると「こちら京都は相変わらず暑い。暑過ぎて乾き過ぎて、今年はカが少ないのです。カは乾燥に弱いのです。というわけで、カがトイレが好きなのは当然なのです」。実に説得力のある論法。思わずうなってしまった。

 ところで、近年、つらつら考えるに、イエカとヤブカとでは、毒素の化学組成式が違うのでは、と思ったりしている。というのは、ヤブカに刺されると、しばらくは強烈なかゆさで悶絶するほどだが、この悶絶を我慢すれば、びっくりするほど、すーっとかゆくなくなる。たまに、むっくり腫れ、三日くらい熱を持つことがあるが…。

 一方、イエカに刺されたときは「あ、刺されたかな」と感じる程度だが、思い出したように時々猛烈にかゆくなる。これを繰り返せば赤い腫れが現れる。ヤブカのかゆさは潔く、イエカのそれは腐った人間の、根に持ったしつこさ、とでもいえようか。と言ってはみたものの、ヤブカに刺されるのもイエカに刺されるのも嫌だなあ…。

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