あおもり昆虫記
ホソヒラタアブ

 「あおもり昆虫記」のビロードツリアブの項でも触れたが、虫は、外観が非常に可愛くても出自をたどれば、外観から想像もつかない事実が隠されていることが多い。要するに成虫と幼虫の生態は全く違う場合がしばしばある−というわけだ。このホソヒラタアブ(細扁虻)も成虫の外観と幼虫の生態とは、想像を絶するほど違う。

 ホソヒラタアブは、小さなアブで、春から秋までどこにでもいる。弱々しく飛び、花の近くに来るとホバリング(空中静止)し、控え目に花の蜜を吸う。写真のアブは、ホバリングをしているところだが、本当に、かわいい、と思う。個人的に、このアブが好きなのだ。

 ところが、かわいいアブの正体は「アブラムシ・キラー」。このアブの幼虫はウジ虫の姿をしていて、草木につくアブラムシを食べて育つのである。人間から見ると益虫だが、成虫と幼虫の落差に面食らってしまう。

 アブは、アブラムシの群れの中に産卵する。幼虫の動作はスローモーだが、アブラムシはそれ以上に動きが鈍くほとんど動かない。だから食べ放題。1匹1匹を高々と持ち上げアブラムシの体液を吸い、ミイラ状にしてしまう。暇な人が観察したところによると、1.5cmぐらいの終齢幼虫は、10分間に3匹のアブラムシを食べるという。1時間では18匹、1日10時間活動すれば180匹、10日でなんと1800匹! 驚くべき食欲。ホソヒラタアブなど天敵がいるからこそ、アブラムシの暴発を防いでいるわけだ。自然の調整能力は偉大である。

 さて、わが家の庭は造成時から、一切手を加えていない放任園である。放っておけば、植生はどのように遷移するのだろう、という興味から手を加えていないのだが、そのうちヨモギが優占種となってはびこった。ヨモギだらけになったら、アブラムシが発生した。すると、アブラムシを食べようとテントウムシが発生した。なんだか、絵に描いたような食物連鎖で、生物の教科書を見ているみたいだ。

 テントウムシが訪れるのと同時に、“ヨモギ園”の周辺をホソヒラタアブがやたらにプンプン飛んでいる姿が目につくようになった。あるとき、肌がすべすべした小さなウジ虫がヨモギの葉の上で盛んにアブラムシを食べているのが目に入った。気を付けて見ると、そこかしこでそのような光景が目に入った。このウジ虫こそホソヒラタアブの幼虫だったのだ。近くで、テントウムシの幼虫がせっせとアブラムシを食べていた。アブもテントウもせっせとアブラムシを食べまくっているのに、まったく減らないアブラムシ。アブラムシもまた、なかなか偉大である。

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