あおもり昆虫記
シマハナアブ

 春先から晩秋まで、県内はもとより日本のどこにでもいる。いや、もっとスケールが大きい。世界中どこにでもいる。この虫、実は全世界共通種なのである。

 ところがわたしは、この超普通種の名前を長い間知らなかった。小、中学校時代、昆虫採集に出掛け、何回となく見てきたが、名前が分からずイライラしてきた。理由は簡単。わたしが持っていた図鑑に、このアブが抜けていたのだ。これじゃ、いくら図鑑と絵合わせしても分かるわけがない。超普通種を落とすとは困った出版社−正確に言うと困った編集者、著者だ。

 このシマハナアブ、これも普通種のハナアブと姿が似ていることはもちろん、生活ぶりもそっくりだ。

 成虫は花から花へと飛び回り、上品に花の蜜を吸っているが、幼虫はウジの格好をし汚水だめや下水溝で暮らしている。大人の姿と育ちとのけたたましい落差。しかし、虫の世界ではよくある話。人間にだってあてはまらないわけではない。ん?

 シマハナアブやハナアブの幼虫は俗にオナガウジと呼ばれている。長いしっぽ(呼吸管)をつけているからだ。汚水の中にすっぽり体をうずめ、しつぽの先を水面に出し呼吸する。そして汚水の中の腐植質や有機物を食べて育つ。ミズカマキリのように“水遁の術”を使う忍者だ。

 腐植質を食べて大きくなった幼虫は、もこもこと動いて汚水から脱出し、土にもぐって蛹になる。そして成虫になれば花行脚をする−というわけだ。

 汚水は県内、日本はもとより、世界中にある。人がいるところに汚水は生じる。ハナアブたちは、人間生活に大きく依存している。だからこそ分布を世界中に広げることができた、といえそうだ。

 しかし、汚水といっても限度がある。有機塩素などが混じる汚水の中では、さすがの幼虫も生きていけない。アブの幼虫が住める程度の汚れにとどめておいてもらいたい、と願わずにいられない。

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