あおもり昆虫記
ビロウドツリアブ

 犬ならチャウチャウ、猫ならペルシャ。で、アブならビロウドツリアブ。ん!?

 体全体がふさふさした毛で覆われている小さなアブ。マスコットにしたい、とつい思いたくなるほどかわいい。4−5月の低山地に普通に見られるが、このアブを見ると、なぜかほほえましい気持ちになる。そして、春の訪れを実感する。

 姿がかわいいこともあるが、飛び方がエキセントリックだ。空中にピタリ静止する。ホバリングという。ヘリコプターが空中静止しているのと同じ現象だ。ツリアブ−つまり「糸で吊られたアブ」の名前は、ここからきている。しかし、行動は機敏だ。空中静止から直線的に超スピードで飛ぶ。そして、カタクリの花、莱の花などの密を吸う。口先だけを花に差し入れて密を吸う姿は、ハチドリを思い出さずにはいられない。

 ある年の5月中旬、青森市効外の東岳に登った。眼下に広がる陸奥湾、青森市街の眺望を楽しみながら昼食を食べていると、このアブが目に入った。タチツボスミレの密を吸っていた。空中静止、吸蜜を繰り返し、なかなか忙しそうだ。

 すると、目の前に落ちていたキャンディーの岳にアブがぶつかってきた。この時は、何を意味しているのか理解できなかった。漫然と缶を見ていたら、再びアブがやってきて口先で岳をつついた。

 「あーっ!」

 思わず声に出した。

なんと、缶には花の絵が描かれていた。雄しべが黄、花びらがピンク。コスモスの絵。アブは絵を本物の花と勘違いしたのだ。そして、絵の花の中心部を口先でつつき蜜を吸おうとしたのだった。

 ドジ。いや、哀しいほどの本能。わたしは、ますますこのアブが好きになってしまった。

 かわいいことこのうえない虫ではあるが、幼虫はヒメハナバチ科の幼虫に寄生するという。出自は、かわいい外観からは想像がつかない、なかなかものもがある。

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