あおもり110山
(よつたきやま  669.6m  市浦村=現五所川原市・三厩村=現外ケ浜町)
 
■ 指導員が年32日間巡視

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四ツ滝山県自然環境保全地域のブナ林を巡視する自然保護指導員の小笠原俊治さん=1998年7月18日
 県が指定している自然環境保全地域は県内に9カ所ある。その1つが市浦村と三厩村の村境に位置している四ツ滝山だ。1980(昭和55)年3月に「ブナ林に覆われた・良好な自然環境で、学術価値の高い地域」という理由で指定された。

 9カ所の自然環境保全地域に、それぞれ1人ずつ自然保護指導員が配置されていることはあまり知られていない。そこで98年7月18日、四ツ滝山の自然保護指導員に委嘱されている小笠原俊治さん(60)=市滴村相内=の巡視に同行してみた。

 午前8時に自宅を出た小笠原さんは、市浦村太田地区から今別町に抜ける長い林道に車を走らせ、両町村の境界になっている峠に降り立った。ここが四ツ滝山の登山口だ。「登山口」と彫り込まれた真新しい標柱が立っている。

 四ツ滝山登山は長い間、市浦村桂川地区から入るのが一般的だったが、市浦営林署が94年、市浦村・今別町の境界尾根に登山道をつくった。桂川口の登山道は長く、急な部分があるが、こちらは短くてこう配も緩やかなため、今では新しいルートを利用する人が多い、という。

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四ツ滝山山頂付近から望む十三湖と日本海=1998年7月18日
 小笠原さんが身支度を整えた。上下の服は、以前務めていた交通指導隊の制服、帽子は20年前の市浦交通安全協会のもの、それに指導員の腕章を腕に通した。足まわりは、スパイク付き長靴をタイヤチューブで縛り、足にフィットさせている。

 見るからに指導員の雰囲気が漂う。「目立つからこの格好をしている。一度山で会っただけで認知されますよ」と小笠原さんはいたずらっぽく笑う。

 登山者がだれもいない道を淡々と歩く。ブナ林を貫いている登山道を40分ほど歩き、山頂に着いた。「異常はありませんね」。ほっとしたような表情を見せた。

 山頂からの眺望はあまり良くない。が、桂川ロヘの道を少し下ると、十三湖など南側の眺めがすべて得られる。この絶景を眺めながら「四ツ滝山の雰囲気には独特のものがある。言葉では言い表せないが、奥深い感じがする。昔から何回も登っているが、とても好きな山だ」 と小笠原さんは話す。

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木無岳山頂付近から見た四ツ滝山(中央奥)=1997年9月11日
 98年春、市浦村役場を退職、山好きなことが知られていたため指導員に推薦された。5月から12月まで、土曜日か日曜日の計32日間、保全地域を巡視する。ごみの持ち帰りやたき火をしないように登山者を指導するとともに、無断伐採などを見たら注意し営林署などに連絡するのが主な任務だ。

 「登山者と会うと『ごみを持ち帰ってください。火はたかないように』と必ず話し掛けることにしている。登山者と山の話をするのは好き」と小笠原さん。「趣味で山歩きをするときと違い、責任感を覚える。でも、独りで山を歩いていると、木が語りかけてくるような感じがして気持ちがいい」とも。

 小笠原さんの前任者だった営林署OBの三和平作さん(63)=同村相内=は「2年間指導員を務めたが、報告するような問題は無かった。登山者が迷ったりけがをしないようにアドバイスすることに気を配った」と振り返る。

 雨の日も風の日も山を歩く指導員。自然環境保全地域はこうした人々の労苦で守られている。

<メモ> 県自然環境保全地域は9カ所

 県自然環境保全地域は、県が指定した「一定正面積以上の、優れて特徴のある自然環境が残されている地域」。1998年現在、四ツ滝山のほか然ケ岳(鯵ヶ沢町)丸屋形岳(平舘村・蟹田町)屏風岩(相馬村)座頭石(弘 前市)戸来岳(新郷村)猿ケ森(東通村)燧岳(大畑町・風間浦村)尾太岳(西目屋村)−の9力所ある。保全地域内では立ち木の伐採や土砂採取などに規制がかかる。県は、さらに候補地13力所の指定をめざしている。

(1998/9/5 東奥日報朝刊に掲載)本文中の、市町村名、人の年齢や肩書きは、取材当時のものです


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