あおもり110山
(まるやがただけ  718m  平舘村・蟹田町=ともに、現・外ケ浜町)
 
■ 津軽半島最高峰んに新道

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険しい山容を見せる津軽半島最高峰の丸屋形岳。これまで、登りの最後は難儀だった=1997年8月7日、丸山林道展望所から
 標高718メートルでありながら津軽半島最高峰。そして奥深い山だ。

 以前は、さい沼−鳴川岳を経て登るルートしかなかったが、丸屋形岳と鳴川岳の間の鞍部(あんぶ)から丸屋形岳山頂までは強烈なササやぶの急斜面。ササのトンネルをはいつくばるようにしてよじ登らなければならなかった。登山時間は約2時間半。最後のよじ登りだけでも1時間を要すため、地元の人たちは足を運ばず、ごく少ない登山者だけが訪れていた。

 手ごわい山に、登山時間約40分という新しい登山道ができた。それまでの登山がうそのような道だ。丸山林道から20分ほどブナの森の緩斜面を登り、尾根に取りつく。ここからさらに25分、風雪にさらされ、いじけた姿のブナ林の斜面を登り詰めると、あっけなく山頂に着く。

 新しい登山道を開いたのは蟹田営林署平舘中師森林事務所森林官の相川正四さん(59)だ。「仕事でも趣味でも山が好き」という相川さんは1992(平成4)年、蟹田営林署に会計係長として赴任してきた。が、机に向かう仕事がしっくりこないため、「現場の仕事をさせてくれ」と上司に頼み込んだ。

 願いがかなえられ94年12月、現在の仕事にかえてもらった。そのとき、丸屋形岳に登ってみよう、という強い思いに駆られた。

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新しい登山道と、道を切り開いた相川さん=1998年7月15日、山頂まで約10分の地点で
 「津軽半島最高峰であることは知っていた。人里から山が見えないため、一種のあこがれのようなものを胸に抱いていた」

 同僚に聞くと、手入れがされていない道があるが、時間がかかる、という。その言葉に「なんとしても1時間程度で登れる道をつくりたいものだ」と考えた。

 これには理由があった。「道は登山にも利用されるが、私たちの本来の職務の、自然を守り国有財産を管理するために利用される。巡視がしやすい道の方が便利だ」。つまり、巡視歩道と登山道の一石二鳥を狙ったわけだ。

 95年2月、相川さんは、かんじきを履いてひぎの上まで雪にもぐりながら初めて丸屋形岳に登った。山頂に立ったとき「ずいぶん遠い山だ。これなら人気が無いのも分かる」が第一印象だった。このとき、地形を把握し、さらに地図を見て登りやすいルートの線引きをした。これまでの道とは反対側の丸山林道から入るもので全長1,200メートル。

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紅葉が美しい「さい沼」。竜神様がまつられ、地元の人たちの信仰を集めている=1997年10月17日
 第三者が国有林に道をつけようとすれば手続きが極めて煩雑だが、国有林職員が巡視目的の道をつけるのであれば、ある程度職員に裁量が任せられ、問題は無い。

 同年6月24日。相川さんが先頭になってルートを選定、計4人がやぶを刈り払い1日で道をつけた。ルートの途中から県自然環境保全地域に指定されているため、立ち木を切らず、土も削らず直登型の道をつくった。

 まだ、新しい登山道を知る人が少ないため、丸屋形岳を訪れる人は依然少ない。それでも丸山林道が今別町とつながれば、この道が丸屋形岳登山のメーンルートになる、とみられる。

 40年以上国有林で仕事をしてきた相川さんの在職期間は残り少ない。長い勤務の中で登山道をつけたのはこれが初めてだった。「形として残るので充実感がある。私の人生の中でずっと思い出に残る山になりました」。柔和な顔が、さらに優しくなった。

<メモ> 信仰集めるさい沼の竜神

 さい沼を含む丸屋形岳、鳴川島一帯約153ヘクタールは1978年に県自然環境保全地域に指定された。さい沼は周囲500メートル。水深1.2メートル。周囲にブナなどの天然林が残り、クロサンショウウオ、モリアオガエルなど貴重な動物が生息する沼として知られる。一帯3.81ヘクタールは、野生動植物保護地区で動植物の採集が禁じられている。沼の西側には平舘村野田地区の守り神の竜神をまつったほこらがあり、地区民の信仰を集めている。

(1998/10/10 東奥日報朝刊に掲載)本文中の、市町村名、人の年齢や肩書きは、取材当時のものです


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