あおもり110山
(くわはたやま  400m  東通村)
 
■ 全国有数の石灰石鉱山

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桑畑山山頂から見た尻屋崎。山頂からは360度の眺望が得られる=1997年9月5日
 下北半島尻屋崎の付近に、なだらかな台地状の山が座っている。これが桑畑山で、全国有数の石灰石鉱山が山のふもとにあることは、あまり知られていない。

 桑畑山で最初に石灰石を採掘したのは日本特殊鋼管。1941(昭和16)年から44年まで、小規模に開発した。

 戦後間もなく日鉄鉱業が、良質の石灰石を産出するこの山に着目した。戦後復興で鉄鋼業が大車輪の時代、製鉄向けの石灰石の需要が高まり、同社も北海道に大量の石灰石を送る必要に迫られていた。コスト的に、近くから輸送する方が良いため桑畑山が選ばれたのだった。

 採掘しようとしていた場所が尻屋土地保全会の共有地だったことから同社は四九年、共有会と話し合い、借地権を得た。港湾設備の規模、石灰石の埋蔵量、気候などの調査を重ねた結果、五千トン級までの船積みが可能であることが分かり、港湾建設や道路整備などがスタートした。

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なだらかな桑畑山=1999年5月22日、片崎山山頂付近から
 こうして57年から石灰石の出荷が始まった。当初の生産量は年間50万−100万トンで、製鉄用とセメント原料に向けられた。製鉄の際、石灰石を溶鉱炉に投入すると不純物が石灰石に吸着し、鉄の純度が高まる。製鉄用石灰石の得意先は新日鉄室蘭だった。

 セメントを製造する三菱マテリアルが同社の隣に進出し79年から操業を始めてから、石灰石の生産量が飛躍的に増えた。現在の生産量は年間約500万トンで、全国の石灰石鉱山の10−15位に位置している。石灰石は、わが国が100パーセント自給できる唯一の地下資源。桑畑山は、その2−3%を生産している。桑畑山の石灰石埋蔵量は数億トンあるとされ、資源枯渇の心配は無い、という。

 採掘現場を見せてもらった。野球場を思わせる広大な露天掘り。石灰石を積み込む巨大なダンプカーが豆粒のように見えた。ここで生産される石灰石は現在、セメント用約60%、砕石 (コンクリートの骨材、道路の路盤材など)約30%、製鉄向け約10%などに向けられている。

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日鉄鉱業が桑畑山のふもとで石灰石を採掘している鉱床の一つ=1999年6月15日
 日鉄鉱業尻屋鉱業所総務課長の柳瀬文弘さん(42)は「ここの石灰石は主に東北、北海道の鉄製品やセメントに形を変えている。建物や道路など社会に必要なものを造るための材料を供給している、との思いで仕事をしている」と自負心をのぞかせた。桑畑山は眺望が良いことから人気があり、車で鉱山に入ろうとする人が時々いる。柳瀬さんは「車も人も鉱山には入らないように」とつけ加えた。

 桑畑山にはかつて寒立馬が放牧されていた。冬の間は尻屋灯台の辺りで育て、五月中旬から十月までは山に上げていた。それは、牛も灯台周辺に放牧しているため、えさが競合するのを避けるのが目的だった。しかし、馬の飼育頭数が減ったため九四年を最後に山での放牧をやめ、今は一年中を通し灯台周辺に放牧している。

 馬は以前は農耕や運搬目的で育てたが、今はもっぱら肉用だ。かつて60頭以上いた馬は現在30頭で2003年には38頭にする計画だ。尻屋牧野組合長の浜道勝宜さん(45)は「9人の組合員で育てるにはこれが限度。馬を山に放牧すると手間がかかり、組合員の本業(漁業)に影響する。現状では山での放牧は無い」と話している。

<メモ> 風力発電で周辺に電力供給

 桑畑山山頂付近に1998(平成10)年4月、2基の風車が建った。全国で風力発電開発を展開しているエコ・パワー(本社・東京)が建設したもので、この1年間に220万キロワットアワーを発電した。標準家庭約650世帯の消責電力に相当し、東通村尻屋、岩屋、尻労など周辺地区の電力を賄っている。同社は「建設場所が確保できれば、10単位で風車を建設したい。桑畑山山頂一帯は、風車建設適地だ」と話している。

(1999/7/24 東奥日報朝刊に掲載)本文中の、市町村名、人の年齢や肩書きは、取材当時のものです


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