あおもり110山
(おりがみやま  920.6m  青森市・天間林村=現七戸町)
 
■ 地下に新幹線トンネル

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なかなか姿をとらえられない折紙山。山頂付近から北に延びる尾根に登ると、やっと全景を見ることができる=1998年3月3日
 青森県民が待ち望んでいる東北新幹線八戸以北は1998(平成10)年3月に起工式、さらに同年8月18日には八甲田トンネル梨ノ木工区で工事の安全祈願際が行われ、ようやく建設に向けて動きだした。これまで幾度となく政治の波にほんろうされ、その都度県民は肩透かしを食・わされてきたが、今度こそ正夢となりそうだ。

 現在、認可されている八戸以北の工事費は用地費と路盤費だけで3千100億円。これに八甲田トンネルの工事費や軌道、電気、建物、車両基地の建設費も加わるため、最終的にいくらになるのか見当もつかない。このため完成年度は、98年3月の認可からおおむね20年後と随分幅を持たせている。夢が現実になるのはまだまだ先のことだ。

 八戸以北の工事の中で最大の難所は八甲田トンネルだ。天間林村(現・七戸町)底田地区から青森市深沢地区(駒込川右岸)までの26.455km。完成すれば、現在建設中の東北新幹線岩手トンネルの25.8km、使用中の上越新幹線大清水トンネルの22.2kmを抜いて“陸上世界最長トンネル”となる。

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東北新幹線八甲田トンネル建設に備えて地質調査をした唐川坑道の坑口=1998年11月11日、唐川沢左岸
 トンネルは天間林村、青森市双方から“登り勾配(こうばい)”となり、両市村の境界−つまり折紙山付近の地下がトンネルのピークとなる。一帯には貫入岩類が多く分布しており、土との接触部分が軟らかくなっている恐れがあった。また、工事中に土の押し出しやトンネル内の湧水(ゆうすい)が予想された。

 このため当時建設を担当していた旧国鉄は81(昭和56)年と82年、折紙山ふもとの唐川沢付近から、400mの調査坑を掘って地質を調べた。これら環境アセスメントが終了したのは85年12月。これと同時に工事実施計画の認可申請をし盛岡以北はすぐ看工の予定だった。

 しかし同年、盛岡以北の着工が先送りされ事実上、事業は凍結状態となった。さらにその後、国鉄が分割民営化。整備新幹線の財源も見直し作業に入ったため調査は中断、長い冬の時代に入った。

 旧国鉄から新幹線建設を受け継いだ鉄道公団が再び調査をしたのは95年と96年だった。唐川調査坑をさらに82m掘り進んでトンネル予定線に達し、さらに切り羽から480mの水平ボーリングをした。

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折紙山に通じる尾根のブナ林に咲く“雪の華”。この尾根が登山ルートになる=1997年3月16日
 旧国鉄時代の調査結果と合わせ、清水や土の押し出しの心配が無いことが分かり、落盤防止の建造物も常識的な範囲で大丈夫なことが確認できた。これを受けて着工へと踏み出すことになった。

 鉄道公団盛岡支社青森鉄道建設所担当副所長の藤沢武夫さんの案内で唐川調査坑に行ってみた。役目を終えた調査坑は、入り口が厚い鉄板でふさがれ、ひっそりとしたたたずまいをみせていた。

 折紙山は、登山道が無いため登山適期は残雪期。唐川沢から林道跡を歩いて尾根に取りつく。ブナ林で覆われた広い尾根は、晴れていれば快適な登山を楽しむことができる。雪の状況にもよるが、みちのく有料道路料金所から約3時間で山頂に着くことができる。奥深い山だ。

 広い山頂からは八甲田、青森市街地などがよく見える。よほどの山好きしか登らない静かな山だが、一度登ると魅せられる人が多い。このひっそりした山の地下約500mで、陸上世界最長トンネルの工事がこれから行われる。

<メモ> ふもとにかつて和銅鉱山

 折紙山ふもとの唐川沢付近にかつて、和銅鉱山があった。通産省関東東北鉱山保安監督部によると、ここに鉱業権が設定されたのは1960(昭和35)年。M鉱業が黄鉄鉱の採掘を目的に62年ごろに掘った、といわれる。このほか黄銅鉱、閃(せん)亜鉛鉱が産出するといわれているが、採掘の実績は不明だ。その後、鉱業権はT鉱業に移ったが、県が71年に調査した時点で休鉱状態となっており、鉱業権は76年6用に消滅した。

(1998/12/19  東奥日報朝刊に掲載)本文中の、市町村名、人の年齢や肩書きは、取材当時のものです


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