| 2002年4月1日(月) |
むつ市関根地区への使用済み核燃料の中間貯蔵施設立地を目指している、むつ市と東京電力が焦りの色を濃くしている。東電が進めてきた立地可能性調査は三月末に終了予定だったが、海底下の断層の有無などを調べる「海上音波探査」を関根浜港周辺で実施できず、最終報告の見通しが立たないためだ。市の根回し不足もあって、同港周辺に漁業権を持ち、探査実施への協力を拒否している関根浜漁協(松橋幸四郎組合長、組合員三百二十八人)の説得工作も手詰まり状態だ。「原子力施設をめぐって、組合員同士でいさかいを起こしたくない。私は漁民のために働きたいと考えているだけだ」 探査を拒否する松橋組合長の姿勢は一貫している。一九八〇年代の原子力船「むつ」新定係港建設をめぐる動きが漁協内部に対立と混乱をもたらした−という苦い思いがあるからだ。工事に伴う海への土砂流入や輸送船通過による操業制限、風評被害も心配だという。 むつ市が東電に調査を正式要請(二〇〇〇年十一月)する前、同漁協にひと言も相談がなかったことも事態をこじらせている。「施設立地で一番困るのは関根浜漁民なのに、配慮がなさ過ぎる」と松橋組合長は憤る。 杉山粛市長は当初、「(東電の探査は)漁協の理事会に議題として提供されていないようだ」と市議会調査特別委で答弁するなど、拒否問題を楽観視していた。しかし、松橋組合長は過去に、日本原子力研究所を相手取り、新定係港建設に伴う埋め立て工事の差し止めを求める訴訟を起こした「筋金入り」(市幹部)。杉山市長は今年に入ると「最初の説明が遅れたことをおわびしたい」と態度を一変させ、漁港改修に努力するという振興策も打ち出している。 東電むつ調査所も説得に必死だ。昨年末にはノリ養殖の共同事業化を同漁協に持ち掛けた。漁港使用や海水ポンプ借用の見返りとして、年間五百万円を支払うという“特典付き”だったが、養殖事業は中間貯蔵施設立地が前提にあるとして、同漁協は受け付けない。むつ調査所幹部は「むつ市からの要請を受けて、勇んで調査に来てみたが…」とため息交じりだ。 関根地区周辺は、「むつ」新定係港建設や原発建設計画に絡み、各事業者が地盤などを詳細に調査済み。実施できない探査の分は既存データを引用する方法もないわけではないが、そうなると調査全体の必要性が問われかねない。仮に施設が立地した場合でも、輸送船の航路を設定するのに同漁協の協力は欠かせないため、市や東電には調査段階で紛争の火種を残しておきたくないという気持ちがあるようだ。 杉山市長に近い関係にある越前陽悦県議は「市長が礼を欠いたということ。まず市長が組合長に頭を下げる場を設け、次はどれだけの振興策を提示できるかだ」と事態打開へ道筋を示すが、松橋組合長は「私が組合長を務めている限り、探査は認められない」と態度を硬化させている。 松橋組合長の任期は残り約二カ月。今後は、役員改選が予定されている五月の同漁協総会が焦点の一つになりそうだ。 (むつ支局・福田悟) ※写真はウニ漁解禁を控え、活気が出てきた関根浜漁港。中間貯蔵施設が立地した場合、使用済み核燃料の陸揚げに使われる関根浜港の西約1キロにある |