| 2002年3月17日(日) |
縄文時代の酒造りに欠かせない素材だったとされる落葉樹ニワトコの実(種子)。青森市の三内丸山遺跡(約五千五百−四千年前)から出土したニワトコの炭化種子をDNA分析したところ、三内丸山びとは従来考えられていた単純な発酵方式ではなく、蒸留という高度な方法で酒造りに励んでいた可能性があることが分かった。静岡大農学部の佐藤洋一郎助教授(植物遺伝学)と弘前大農学生命科学部の石川隆二助教授(同)らの研究グループが分析したもので、縄文観をさらに変える成果の一つ。二十四日に青森市の県総合社会教育センターで開かれる同遺跡報告会(県教委主催)で発表される。ニワトコは本州に広く分布する「ニワトコ」と、北海道を中心に見られる「エゾニワトコ」の二種類に大別される。「ニワトコ」の実は貴重な山の幸として、長い間食用に利用されてきた。これに対して、エゾニワトコはアルカロイドと呼ばれる水溶性の毒性成分を含むことから、食用には適さないとされる。 この二種類のニワトコの種子は、外観から区別がつかないのが特徴。このため、同研究グループは三内丸山出土のニワトコの炭化種子をDNA分析にかけたところ、エゾニワトコに近い種類であることを突き止めた。 エゾニワトコの毒性成分は、単純な酒造方法である発酵では取り除くことができない。このため、三内丸山では酒造りが行われていなかったのか−という、近年になって定着しつつある「縄文酒造説」を揺るがしかねない疑問が生じた。 しかし、同研究グループは「祭祀(さいし)性が極めて強い三内丸山という大規模集落で、祭りという儀式に不可欠な酒が造られていなかったとは考えにくい」(佐藤助教授)ことから、毒性を取り除く技術を持っていた可能性が高いと判断。それは(1)蒸留方式か(2)蒸留以外の方法−と推定した。 また、現在の三内丸山周辺から採集したニワトコは、やはりDNA分析から「ニワトコ」であることが分かった。 石川助教授は「簡単に言えば、三内丸山びとは単純なドブロク(発酵酒)ではなく、高度でアルコール度の高いリキュール(蒸留酒)を造っていた可能性があるということ。さらに、蒸留以外の高度な技術で毒抜きするすべを知っていたことも考えられる」と話す。 三内丸山の植生がエゾニワトコから「ニワトコ」に変化したことについて、石川助教授は「気候変動が想定できるが、周辺を徹底的に探せばエゾニワトコは見つかるかもしれない」と説明。「縄文時代から遺伝的に生き残っているエゾニワトコが発見できれば、五千年前のリキュールの味を再現できるかもしれない」としている。 ※写真はDNA分析された三内丸山遺跡出土のニワトコの炭化種子 |