2002年3月15日(金) 東奥日報 ニュース


■ 核燃サイクル訴訟、住民側が敗訴

写真  六ケ所村で操業中の日本原燃ウラン濃縮工場をめぐり、核燃サイクル一万人訴訟原告団(一七一人、代表・浅石紘爾弁護士)が国に事業許可の無効確認と取り消しを求めた行政訴訟の判決が十五日、青森地裁で言い渡された。山崎勉裁判長は、六ケ所村と横浜町に居住する原告十四人の請求を棄却、それ以外の原告百五十七人の訴えを却下、門前払いとした。

 判決は提訴から十二年八カ月ぶり。原告側は同村の核燃サイクル関連四施設についてそれぞれ行政訴訟を起こしているが、判決が出るのは初めてとなる。

 山崎裁判長は判決文の中で、同工場の事業許可申請に対する国の安全審査について「当該加工施設(濃縮工場)の基本設計のみが規制の対象になる」とした。安全性については、国の許可処分は原子炉等規制法など関係法規に基づいて適法に行われ、現在の科学技術水準に照らしても不合理な点はないとした。また国は安全審査を(1)基本的立地条件(2)事故防止対策(3)被ばく低減対策(4)一般公衆の被ばく防止対策−の四つの安全性について行ったが「判断に看過しがたい過誤、欠落はない」と、国の主張を認めた。

 三沢市の米軍および航空自衛隊基地の存在に伴う同工場への墜落事故の危険性については、国の安全審査にある「墜落の可能性は約百万分の一」との判断に過誤はないとした。また同工場敷地周辺の地震調査についても、過去のデータに基づき最大震度を五と想定した国の判断を支持。危険性を強く訴えた原告の主張を退けた。

 原告団の多くを県外在住者が占めることをめぐる原告適格性では、同工場で事故が発生したときに重大な被害を受ける住民を同工場が立地する六ケ所村と隣接の横浜町の居住者に限定。それ以外の居住者は周辺住民とは認めなかった。

 一方、判決文では、同工場で一九九四年に発生した事故について原燃が施設の一部に多重防護対策を施していなかったことを認めたが、これを安全審査の過誤に結びつけることはできないとした。また九九年の茨城県東海村臨界事故についても触れ、作業者のずさんな管理に起因する事故は、現行制度では安全審査の過誤との評価はできないとして、同事故がウラン濃縮工場の安全審査の妥当性を左右しないとの見解を示した。

※写真はウラン濃縮工場訴訟の判決のため青森地裁に入る浅石絋爾代表(左から3人目)ら原告団=15日午前9時半ごろ

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<解説>

 提訴から十三年にわたり、核燃施設の危険性を訴え続けてきた住民に対し、司法は全面敗訴という厳しい判決を突きつけた。しかし住民側の地道な活動は、国民と国や事業者の間に厚く立ちはだかっていた「企業秘密」「機微情報(核防護上取り扱いが制限される情報)」という壁に風穴をあけ、核燃サイクル進ちょくに慎重姿勢をもたらすという一定の成果を挙げたといえる。

 訴訟の対象となった濃縮工場は、天然ウランに含まれる燃えるウラン235の濃度を高め、原発で使える燃料にする施設。しかし遠心分離器の配置など施設の詳細はほとんど公表されていないのが実情だ。

 国の安全審査を通しても工場の詳細なデータは一切公表されないまま、原燃は一九八八年に事業許可を受け、九二年に操業を開始。しかし住民側は訴訟を通し、安全審査の過程の一部公表にこぎ着けるなど「窓の覆いを取り去り、すりガラスにできた」(原告団の平野良一核燃料廃棄物搬入阻止実行委員会代表)といえる。

 国の安全審査の妥当性の有無について、判決は住民側の立証をある程度評価したものの、サイクル施設は原発より安全として、法律論に終始した国側の主張を支持する形となった。事業許可処分をめぐる行政訴訟である以上はやむを得ないことだが、国や事業者は自ら積極的に住民の抱える不安感を理解する努力が必要だろう。

 再処理工場など残る核燃サイクル三施設の行政訴訟が今後も続く。今回の判決が他の訴訟にどのような影響を与えるか、注目される。(政経部・若松清巳)

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<判決骨子>

 一、原告らのうち六ケ所村または横浜町に居住する十四名は、本件施設に事故等が発生した場合に直接的かつ重大な被害を受ける周辺住民と認められ、本件訴訟の原告適格を有するが、その余の原告らは、本件施設の周辺住民には該当せず、本件訴訟の原告適格を有しない。

 二、ウラン濃縮は、原子炉等規制法が規制の対象とする「加工」に該当するから、本件施設の設置許可処分は、同法における加工の事業にかかわる規制に関する規定に基づくものといえる。

 三、本件施設の設置許可処分の手続きは原子炉等規制法その他の関係法規に基づいて適法に行われている。また、申請者に所要の技術的能力があり、また本件施設につき核燃料物質による災害に対する安全対策が図られているとした原子力安全委員会の審査および判断の過程には、現在の科学技術水準に照らしても看過し難い過誤、欠落はなく、この判断を基にして加工事業許可処分をした内閣総理大臣の判断に不合理な点はない。

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