| 2001年11月11日(日) |
ITER(国際熱核融合実験炉)の本県誘致に伴う、県の財政負担が徐々に輪郭を現してきた。八十億円以上の建設用地確保、百二十億−百五十億円の高圧送電線敷設、百七十億円の研究者住居整備−。県はいずれも試算であり、すべてを県費で賄うわけではないと強調するのだが、相当な額の負担が生じるのは間違いない。特に高圧送電線の敷設では、財政負担の可能性について、県民への説明責任をなおざりにしたまま正式誘致へ名乗りを上げた県の手法に、県議会からの批判の声が一段と高まっている。「ITER誘致はエビでタイを釣るようなもの」。県商工観光労働部の蝦名武部長はこう話し、誘致活動に不利な話題はできるだけ伏せたまま、明るい面を強調しようとする。一兆円以上の経済効果が、県費負担を埋め合わせて余りあるというわけだ。 しかし、高圧送電線敷設費の県負担が問題化したことを受けて、県が五日の自民党会派議員総会を皮切りに始めた説明では、研究者の居住環境整備事業「レイクサイドビレッジ構想」の経費を含む財政負担の試算額が明らかになり、波紋を広げた。 同構想は、ITER完成時には外国人四百人、日本人二百人の研究者が六ケ所村に居住し、研究に従事するとみられている。このため、ホームパーティーなどを自宅で開く習慣を持つ外国人研究者向けに、敷地面積約二百平方メートルのゆとりある一戸建て住宅百戸など、計六百戸の住宅建築を想定している。 県はこれまで、レイクサイドビレッジ構想の概要は説明してきたが、具体的な財政負担は「誘致決定後に関係機関と協議する必要があり、試算はしていない」ことを理由に公表を避けてきた。 また、ITER建設用地の購入費は、七月の誘致提案書提出前に明らかにしていた唯一の財政負担項目。新むつ小川原会社と交渉する方針の購入費用は総額九十一億円の算定だったが、五日の説明では十億円ほど減った。県は、その積算根拠を現段階では示していない。 一方、財政負担問題の発端となった高圧送電線敷設費をめぐる県と県議会の不協和音は依然、尾を引いている。七月の全員協議会で説明は済んでいる−と主張する県の姿勢に対し、県議の多くが「財政負担が伴うとは聞いていない」と猛反発。与党議員への個別説明で沈静化を図ろうとした県の動きが、逆に批判を招くありさまだった。 去る十日の政風会と公明党の合同議員総会では、県側が七月の全員協議会の席上、送電線敷設に伴い百五十億円の負担が生じる可能性について、あえて言及しなかったことさえ判明した。「経済効果に比べれば財政負担は大した額ではない」と、県側に理解を示す県議もいたが、それまで「一兆円」としてきた経済波及効果が、二割増の一兆二千億円になった理由については、県の説明はなかった。 それでも木村守男知事は六日の定例会見で、厳しい県財政に触れた上で「われわれは誘致に向かう」と強調。ITERをむつ小川原開発の起爆剤ととらえ、誘致実現を至上命題とする県の姿勢を崩さない。 こうした県のやり方にに鹿内博県議は「むつ小川原の将来へ向けた明確なビジョンを持たないまま、なりふり構わずあらゆる施設を張り付けようとしている」と、手厳しい。 (政経部・若松清巳) ※写真はITER誘致に伴う県の財政負担について、蝦名部長(手前左)が説明した県議会自民党会派の議員総会=5日、県議会 |