2000年7月1日(土) 東奥日報 ニュース


白神山地の生態系調査成果報告会
六ケ所村長、締結了承を明言せず
並行在来線値上げに県民の反応


■ 白神山地の生態系調査成果報告会

写真  「ブナの森は約百二十年で代替わりする」「クマゲラは危機的状況。個体生息には千ヘクタール以上のブナ林が必要」−。白神山地の世界遺産地域内で初めて行われた生態系モニタリングの成果報告会が三十日、青森市の東北森林管理局青森分局で開かれた。原生的なブナの森に代表される白神の生態系はこれまで十分に解明されていなかったが、長期的な森林動態や人のかかわりについての興味深い報告のほか、課題も指摘された。

 調査は、同分局と森林総合研究所東北支所が遺産地域周辺の将来の管理方策を探る基礎資料とするため、七−十一年度に実施、今後も部分的に継続する。ブナ林の構造の一端や今後の課題を示唆する主な研究発表を見てみると−。

ブナ林の動態
 核心地域に当たる鯵ケ沢町赤石川源流、秋田県藤里町粕毛川源流の二カ所にそれぞれ二ヘクタールの固定調査区を設定。ブナをはじめとする、ホオノキ、イタヤカエデなど区域内の樹木一本ごとに種類、サイズ、樹齢など“木の戸籍”を調査した。
 青森側は二十二種類九百七十九本のうちブナが二百六十六本(全体の二七%)、秋田側は二十一種類七百三十八本のうちブナが四百一本(同五四%)だった。単純計算では、一万六千九百七十一ヘクタールの遺産地域内に二百二十六万−三百四十万本程度のブナがある。鯵ケ沢調査区では、一年間に調査木全体の〇・八二%に相当するブナなど八本が倒れており、毎年同様に倒木が発生したとすれば、約百二十年で森全体が世代交代する計算になる。

クマゲラの生息状況
 白神山地のクマゲラは営巣木としてだけなく、えさを取る上でもブナに強く依存している。遺産地域周辺で確認されている繁殖地は八カ所。その生息は危機的状況にあり、生息のためには行動圏で千ヘクタール以上の広さとブナの大径木が必要になる。

ニホンザルの生息域
 白神山地は北東北で最大面積のニホンザルの生息地。分布域は約二十年前の一・七倍に拡大、山すそへも広がり農業被害も増えた。被害対策を立てるためにも群れの配置や分布拡大のメカニズム解明が課題となる。

白神山地への来訪者
 両県の主な来訪ポイント十一カ所の来訪者は、全体で一日当たり百人台から千人台と季節や曜日による幅があった。
 暗門の滝入り口が来訪者全体の約半分、青森側だけでみると全体の九割を占めた。来訪者アンケートでは、目的別で「白神山地(世界遺産)を見るため」が最多、「おいしい空気・静けさを求めて」「登山をするため」「ブナ林を歩くため」などが続いた。

来訪者による影響
 白神ではないが、岩手県安比高原のブナ天然林内にある裸地歩道(平たん地で植生や落葉層を除去)で調査した。約二年間に一万人が歩いた後、歩道中央付近の土壌浸透力が天然林の約一〇%前後まで減衰。傾斜地の歩道には保全対策への一層の留意が必要となる。

※写真は鯵ケ沢町赤石川源流の核心地域にあるモニタリング調査区のブナ林。長期的なブナ林の動態を調べるのが目的=11年6月撮影



■ 六ケ所村長、締結了承を明言せず

 使用済み核燃料本格搬入の前提となる安全協定問題で、六ケ所村の橋本寿村長は六月三十日開かれた村議会全員協議会で再び議員の意見を聞いた。同村長は村と議会が県に強く要望している防災避難道路の整備について「県が前向きに取り組むとの確信を得ている」と述べ、協定締結への条件が整いつつあるとの考えを示したが、締結を了承するかについては明言しなかった。

 全員協議会終了後、記者会見した同村長は「協定についてはおおむね反対の声はなく、焦点は防災のインフラ(基盤)整備だと考える。四日の市町村長会議では立地村の実情をきちんと説明し理解を得たい。締結の意思表示については今後、議会の意見を整理し、庁議を開いて村民の不安を払しょくできる段階かどうか検討する」と語り、了承の時期については慎重な態度を崩さなかった。

 全員協議会では、議員から安全協定案に対する異論は特に出ず、協定締結に当たっては防災避難道路の整備や核燃料物質等取扱税(県税)の配分で県、国に強い態度で臨むよう要望する意見が相次いだ。

 防災避難道路について橋本村長と村担当課は「県とも協議し、平沼地区の渋滞解消を最優先させることを決めた。バイパスを十三、十四年度の二カ年で整備したい。九月議会に調査費・基本設計費を計上する予定だ」とし、計画が一部具体化していることを明らかにした。




■ 並行在来線値上げに県民の反応

 「市や町が負担した方がよい」「運賃値上げは絶対困る」「私鉄とバランスが取れるなら」―。東北新幹線盛岡・八戸間開業に伴いJRから経営分離される並行在来線について、有識者による研究会は運賃引き上げも必要―との中間報告をまとめたが、通学、通勤などに鉄路を使う県民の声を聞いた。

 現時点で、必ず賃上げが行われるということではないが、賃上げを前提にJR利用者から話を聞くと、平内町から青森市の高校に通う十七歳、十八際の高三女子二人は「市や町で負担してもらった方がいい」という。「今でも定期券は三カ月で二万円を超える。定期が切れて自腹の時もあり、値上げは痛い」からだ。

 青森市の会社員女性(53)は「賃上げは打撃だが、他と比べればJRは安いので若干の値上げなら」と言う。小湊駅と青森駅を月に六、七回往復するという無職男性(77)は「公共性を考えれば低い運賃設定にすべき」とし「東北本線は国の骨格路線なのだから、国が維持するべきだ」と異を唱える。

 高校生の娘が通学で電車を利用している南部町の会社員女性(45)は「本当に値上げになるか分からないが、乗る人が減るのでは」と困惑気味。買い物で在来線を利用する八戸市の主婦(59)は「新幹線が来るのなら」と一定の理解をみせた。

 一方、従来からJRより高い運賃を支払っている私鉄利用者の反応もさまざま。十和田市から三沢市に通う会社員女性(22)は「在来線の賃上げはある程度仕方ないが、私鉄の連動値上げは困る」と警戒。六戸町の主婦(39)は「運賃を上げざるをえないなら、乗継割引や私鉄と在来線を一つの切符で乗れるようサービスに工夫を」。

 五所川原市の主婦(40)は「いつも利用している人の声を聞いてほしい」と注文。中里町の高一男子は「JRに比べ私鉄運賃は高い。並行在来線が運賃引き上げをするのはやむを得ないこと」と話していた。

中間報告 研究者、シンクタンク、鉄道会社関係者でつくる「鉄道整備における上下分離方式に関する研究会」(座長・石井晴夫作新学院大教授)が行った。第三セクター鉄道会社の運営については「原則として沿線市町村からの財政支援は求めず、既に線路などに多額の公費が必要であることを考えれば、近隣私鉄運賃の水準を参考に運賃を上げる必要がある」と指摘。研究会報告は第三セクター会社の経営基本計画決定に拘束力を持たないが、一定の検討材料となる。




■ 三沢空港滑走路が改修で閉鎖

 米軍三沢基地が管理する三沢空港滑走路が改修工事のため、三十日夜の日本エアシステム(JAS)東京行き最終便の離陸後に閉鎖された。滑走路は米軍、航空自衛隊、日本エアシステムが共同使用しているが、七月六日午前六時まで民航機、軍用機の運用を停止する。JAS便は一日朝から五日の最終便まで運休となり、同社はこの間、三沢発着便を青森空港に振り替える。

 JASは三沢−東京便四往復、大阪(伊丹)便一往復、札幌便一往復が就航しているが、このうち東京便三往復、伊丹、札幌便各一往復を青森便に振り替えるほか、八戸−三沢空港−青森空港間の連絡バスを一日一往復運行する。繁忙期でないため振り替えは順調に進んでおり、大きなトラブルは起きていないという。

 一方、航空自衛隊と米軍は工事期間中、ヘリコプター以外の飛行運用を停止。飛行を伴った訓練は行わないが、空自はF4EJ改戦闘機を千歳基地に、E2C早期警戒機を海自八戸航空基地に展開、対領空侵犯任務に当たらせる。

 改修工事は路面の傷みによるもので昭和六十三年以来十二年ぶり。幅約四十六メートル、延長約三千メートルの滑走路のうち、東端部分三百六十六メートルに新しいアスファルトを敷くが、天候の悪化により工事ができない場合を想定し、九月下旬に五日間の予備日を設けている。次回の工事は西端部二百七十四メートルで十三年度以降になる見通し。

 ◇

 一−五日の三沢空港の滑走路改修工事に伴い、JR盛岡支社は、同空港発着のJAS便が運休する五日間、上下の特急「はつかり」合わせて四本に二両を増結、一本当たりの指定席を通常の百六十四席から三百席に増やす。

 増結するのは次の通り。

上り▽はつかり8号(午前8時45分青森発、同9時半三沢発)▽同20号(午後2時41分青森発、同3時26分三沢発)

下り▽同7号(午前11時39分盛岡発、午後1時3分三沢発)▽同19号(同5時47分盛岡発、同7時11分三沢発)



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