青森地裁で4日、判決が言い渡された全国3件目の裁判員裁判で、裁判員を務めた4人の記者会見詳報は次の通り。裁判員経験者の番号は法廷の並び順に従い、法壇に向かって左から1番が男性(29)、2番が男性(44)、5番が60代の主婦、6番が牧師渋谷友光さん(45)。 ―判決を終えた感想をお話しください。 2番 正直ほっとしています。人を裁くことにかなり緊張しました。評議室では、和気あいあいではないですが、チーム意識というか仲間になってやったので、話せるような環境がありました。 1番 まだ緊張が解けていませんし、自分の中で整理できていません。これから家に帰って、自分の中で整理して終わりにしたいです。 5番 わたしは求刑通りになってよかったと思います。 6番 一人の被告人に対し判決することが、これほど難しいことだということを実感しました。ただ、判決を言い渡すだけではなく、チームで考えた内容を彼に届けられるのか、届いてほしいと願いながら一生懸命にやりました。いまは疲れも感じています。 ―性犯罪を裁いた感想をお聞かせください。 6番 犯行内容が明らかになっていき、その状況を聞くたび、心が苦しく、正直、気分が悪くなりました。けれども現実を見なければ、正しい判決ができないので、自分なりに真剣に向き合えたと思っています。このような事件が二度と起きないようにしなければならないと思いました。 5番 (裁判員の中で)女性はわたし1人でしたが、補充裁判員の方の中に女性が2人いたので、評議では、あまり(女性が1人だけということは)感じませんでした。男性(の裁判員)にも女の子がいる人もいたし、わたしも娘がいますし。みんな親身になってやっていました。 1番 今回、男性意見に偏ると言われていましたが、それはなかったと思っています。 2番 性犯罪ということで、難しかったです。今まで報道やニュースを見てきましたが、現実味がありませんでした。こういう立場になって、すごく苦しかったです。 ―これから裁判員になる方に伝えたいことがあれば、お願いします。 2番 そんなに言えませんが、やってみてすごい経験になりました。充実感もあるし、最後まで頑張ってやってみてほしいです。 1番 今はこうやって騒がれている中で、時間がかかるかもしれないが、裁判員裁判が普通になって、参加してほしいです。 5番 裁判長や裁判官のみなさんがわたしたちの目線で話してくれたので、緊張せずに法廷に臨むことができました。これからの人も頑張って参加してください。 6番 普段は接触できない裁判官とテーブルを挟んで話ができました。裁判官の方たちが事件について一つ一つ真剣に話している様子を見て、感動しました。これから裁判員裁判に臨まれる人は重い仕事の一つだと思いますが、一つの刑を言い渡すことは社会に対し、少なからず、メッセージを送ることになると思うので、一般庶民の感覚でどのような社会になってほしいか伝える一つの機会だと思います。 5番 追加で言っていいですか。今回、友達の大切さを感じました。被告と同じような環境の人はたくさんいますが、彼には真の友人がいないことが、事件の一つの要因ではないかと思いました。友達をつくれない人をどうしたらいいのか、それを考えるのが、わたしたち大人の課題だと思いました。 ―男性は被害者の気持ちが分かりにくいとか、逆に女性は被告を理解することが難しいとか、感じることがありましたか。性犯罪を裁くとき、裁判員の男女比はどう思いますか。 2番 今回、女性は1人だけでしたが、補充裁判員の中に女性が2人いて意見を聴いたので、その点はよかったと思います。男性、女性にかかわらず犯罪を憎むことに変わりないと思います。 1番 雑談の中で「男女同数にしたらいい」という話も出ましたが、審理を終えてみて、普通にくじで(選べば)いいのではないかと思います。 5番 結婚している方は奥さんの立場を考え、自分のこととして親身に考えられていました。でもこの先、性犯罪を裁く裁判で、くじ引きだと独身の人も入るでしょう。これからは結婚している男性3人、女性3人が望ましいと思います。 6番 最初、選ばれたのは男性5人、女性1人でしたので、意見が偏るのではないかと心配しましたが、その不安は払拭(ふっしょく)されていきました。男性だから(被告と)同じ男として厳しく考えたり、「なぜ」といった感覚が出てきました。ですから今回に限っては、バランスの悪さはありませんでした。ただ、今後は6人のうち、少なくとも2人は女性の方がさらにいいかもしれません。 ―被害者のプライバシーへの配慮について、どう感じましたか。 6番 性犯罪でデリケートな問題なので、プライバシーの保護を考える必要があると思います。びっくりしたのは、守秘義務のない傍聴人に対して犯行内容が読み上げられていたことで、大丈夫なのかなと思いました。今回はビデオモニターを使って被害者の話を聞けましたが、音声も変えた方がよかったのかなと思いました。 5番 ビデオリンクに皆さんは被害者の顔がしっかり映っていると心配していると思いますが、暗い部屋の中で映しているので、わたしたちもよく分からない、外で会っても分からない感じのビデオでした。 1番 犯行過程を詳しく言われたことに衝撃を受けました。それに生の声が傍聴席にも聞こえたことが衝撃的でした。 2番 プライバシーということですが、モニターでは、配慮されていました。5番さんの言っていたように、被害者は映っていますが、そんなにはっきり見えません。6番さんの言った通り、今後声を変えるとか、そういう措置を取った方がいいと思いました。 ―四つの事件の併合審理で検察側も弁護側も長時間にわたり、調書などを読み上げましたが、負担を感じたり、判決を出すのに難しさを感じたりしましたか。 2番 一番苦労した点は量刑の部分です。時間もおして苦しんでやったんですけど、できればもう少し(中間)評議の時間がほしかったです。途中の休憩時間などに裁判官から説明を聞くんですが、それだけで終わってしまって、議論を交わす時間が少なかったと感じました。 1番 2番さんと同じです。 5番 分かるように説明してくれたので、長々としていても自分が内容に入り込んだので、長いとは感じませんでした。 6番 事件の内容は検事も弁護士も詳しく話してくれました。時間を忘れて聞くことができましたし、苦痛は感じなかったです。四つの事件で量刑を考えるのは、みんなで意見を出し合いながら考えていきました。事件の全体像を知り(後になって)この部分を聞きたいというところが出てくるので、質問できる時間があったらよかったと思いました。とはいえ、判決はわたしたち9人が被害者の痛みや苦痛や屈辱と、被告の今後をいろいろ考えた上で出させてもらった答えです。 ―昨日の夜はどのように過ごしましたか。 6番 半分は、家族と変わらない生活を送り、もう半分は、裁判のためにできない仕事を片付けました。それでも頭の中をぐるぐると、事件のことが駆け巡っていたという感じです。 5番 わたしは主婦なので、家に帰ると山のように仕事があって、忙しくて事件のことは考えないように過ごしました。それでも夜中に目が覚めて、被害者の気持ちを考えさせられました。 1番 家族と過ごしたけれど、一人のときに要所要所を考え、夜遅くまで起きていました。 2番 普段通り過ごしました。テレビを見ないようにして、家に持ち込まないように努力しましたが、時たまテレビを見たとき、ニュースでしていたので…。 ―守秘義務が課せられていますが、負担を感じますか。 6番 確かに負担がないと言えば、うそになりますが、3日間向き合ったことを通して守っていかなければと感じます。 5番 同じです。 1番 とても重く感じています。 2番 一番つらいと思うのが守秘義務で、普通の生活をしていく中で、わたしは酒も飲むので、どうしようかな、あまり強く飲めないかなと考えています。忘れてはいけないんだろうけれども、なるべく早く忘れていこうかなと思っています。 記者会見後、6番は補足取材に応じ、次のように答えた。 ―率直な感想をもう一度お話ください。 「一人の人に対して判決を下すということは大きな責任と、その人に対して決めなきゃいけないという寂しさを感じました。やっとほっとしたというか、役割を全うできたかなと、安堵(あんど)感があります」 ―性犯罪を裁いた感想をより詳しく教えてください。 「事件のあらましを聞いていくうちに、難しさを感じると同時に、ほんとにこんなひどいことが起こったのかということを理解していって、すごく残念な気持ちと気分も悪くなったというのが正直なところです。被害を受けた方々の気持ちを理解していくのは非常に大変な心の作業でした」 ―審理中、気分が悪くなったのは、具体的にどういう場面ですか。 「強姦(ごうかん)の現場が語られていくところや再現された写真を見ることは、気持ちがいいものではないですね」 ―モニターで被害女性を見た際、プレッシャーとか嫌だという気持ちはありませんでしたか。 「プレッシャーというよりも気の毒というか、このことさえもつらいだろうなと思って、あまり凝視しませんでした」 ―性犯罪への考え方や印象は変わりましたか。 「今回は非常に若い被告人でした。社会全体も何がそういう犯罪に彼を駆り立てていったのかということを、もう一度考えなきゃいけないなと思いました。(アダルト)DVDに規制をかけたりすることができないものかと思いました」 ―判決宣告の際、ハンカチで目元をぬぐっていましたが、それはどういった涙なんでしょうか。 「きょう一番つらかった部分でもあります。いろいろ考えていった上でほんとに被告人がやった犯罪は許せないことだし、その刑にしっかり服してほしいという気持ちがありながら、更生してもらいたいなという思いがこみあげてきて、涙があふれてしまいました」 ―懲役15年と告げられた瞬間、被告はどのような表情でしたか。 「本当に反省しているのかなと、少し疑いの目で見ていましたが、判決の瞬間は、非常に真剣な顔をしていました」 ―裁判員裁判の対象に性犯罪は入っていた方がいいと思いますか。 「難しい質問ですが、被害者の思いなどを考えたときに不安は今でもありますが、現実を知ってみんなで考えていくことも、やはり大事なのかなと思いました」 ―モニターを通じた被害者の意見陳述には、どのような感想を持ちましたか。 「つらいだろうけれど、わたしたちの前でもう一度証言してくれたことの切実さというか、被害者の思いが痛いくらいに伝わってきた。終わった後の休憩時間は、裁判員の皆さんは口数が少なくなって、何も言えない状態になりましたね」 ―今後生きていく上で変化はありますか。 「最初に被害に遭った方が経済的な問題で、すぐ引っ越せなかったということが伝えられ、なぜ被害者に対してもっと心ある対策、ケアが速やかにできないのかなと。聞いた者の責任として、それを声に出していかなければいけないのかなと思いました」 ―法律の仕組みは理解できましたか。 「分かりやすく教えてくれたので、理解できましたね。ただ過去の事例を挙げられましたが、事件が違うと内容も違うので今回の事件と比べていいのかという難しさは少し感じました」 ―刑の重さはどうしても数字に置き換えなければならないのですが、ご自身はどうやって数字に置き換えましたか。 「検察側の求刑が一つの判断材料ですし、弁護側から出された数字も判断材料になったわけですが、性犯罪に対して、皆さんの意見では、割とこれまでは軽い判断で裁判がされてきたということがありました。さまざまな材料を持って考えさせていただきました」 ―今まで軽い判断と思ったのは(評議で配布される)量刑分布を見てということですか。 「そうです」 ―求刑の懲役15年と、弁護側の「懲役5年が相当」という意見とは、大きく違いましたが、どう思いましたか。 「こんなにも差があるのかと驚きました。被告人の話を聞いた者としては、5年というのは軽いなと思いました」 ―事件の再現写真を見る必要はありますか。 「見た後のショックは大きかったですね。やはり見る責任があると自分を納得させながら見ていました」 ―裁判中の生活はどうでしたか。 「精神的に疲れましたね。寝ているときも普段より睡眠が浅いような感じで、やはり頭の中では裁判のことが離れないでいるので、夢の中でよぎるようなときも(ありました)」 ―職業柄、重荷になったりしませんか。 「職業柄ではありませんが、被告人がなぜそこまでしてしまったのか、どうしたら立ち直れるのかということを繰り返し考えました」 ―成育歴について何か心にありましたか。 「良い子の自分を演じてきたというか、二面で生きてきたというところですね。そのままの自分を受け止めてくれる周りがなぜなかったのかなという、彼も探さなかったのかもしれませんし、そういうところは痛みとして聞きました」 ―同じ男性として、被告をどういうふうに感じましたか。 「大きないら立ちというか怒りを感じました」 ―参加してよかったですか。 「貴重な体験をさせてもらった。一生懸命みんなで考えることができたので、無駄ではなかったと思います」 (補充裁判員は評議に立ち会い、裁判長から求められた場合、意見を述べることができる) (共同通信社) |