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  • 2017年11月13日(月)

シャトー・ラトゥールは「テロワール」と「テクニック」の“イイトコドリ”

フランス人の好む言葉に「テロワール」がある。

テロワールとは、ある範囲の土地に影響を及ぼす、土壌や気候などの自然条件をひと言で表した言葉。砂利や粘土、石灰岩や片岩といった土壌そのものに加え、土地の傾斜とその向き、風の流れ、標高の高さ、気候的に温暖か冷涼か、乾燥しているかそれとも湿潤かなどなど、ありとあらゆるファクターが含まれている。

Photo:Tadayuki Yanagi
それでフランスのワイン生産者たちは、自ら手がけたワインが高い評価を受けると、それは「天が贈り給いしテロワールのおかげ」と胸を張る。なぜか? 

たとえばボルドー5大シャトーのひとつ、シャトー・ラトゥールを例に挙げれば、その原料ブドウのカベルネ・ソーヴィニヨンは世界のどこにでも植えることができるが、シャトー・ラトゥールのテロワールを移動させることはできないし、その模倣をすることも叶わない。したがって、シャトー・ラトゥールの品質を決めているのは、一にも二にもテロワールというわけだ。

Photo:Tadayuki Yanagi
ところが、1976年にパリで開催されたフランスワインとカリフォルニアワインのブラインドテイスティング(名前を隠してワインの評価を下す目隠し試飲)において、フランスはカリフォルニアに完敗。そのテロワール神話に疑問符がついた。

一方のカリフォルニア、なかんずくナパ・ヴァレーは、これを機に高級ワインの生産地として大躍進。90年代になって高品質、少量生産のカルトワインを多数生み出し、ボルドーのトップシャトーを脅かす存在へと着実に成長していったのだ。

これに対し、指をくわえたまま黙っているわけにはいかないのがボルドーである。

シャトー・ラトゥールには90ヘクタールのブドウ畑があるが、そのすべてが最良のテロワールとは限らない。カベルネ・ソーヴィニヨンの力強さ、深み、長期熟成のポテンシャルを最大限に引き出すことが出来るのは、深い砂利質土壌をもち、ジロンド川に近い“ランクロ”と呼ばれる47ヘクタールの土地。そこで真のラトゥール、すなわち「グラン・ヴァン・ド・シャトー・ラトゥール」はこのテロワールの心臓部分のみから造ることに決め、それ以外の畑は自動的にセカンドラベルの「レ・フォール・ド・ラトゥール」へ回すことにした。

Photo:Tadayuki Yanagi
じつのところ、シャトー・ラトゥールがセカンドラベルを造り始めたのは1966年からだが、それはあくまで不作の年に、これをラトゥールにしてはまずかろうというワインを格下げしたに過ぎない。グラン・ヴァン・ド・シャトー・ラトゥールの品質を頂点まで高めることを目標に、テロワールのイイトコドリを決め、セカンドラベルを毎年生産するようになったのは1990年以降なのだ。

ところで、テロワールのフランスに対して、テクニックのカリフォルニアといった印象があるが、近年のボルドーはテクニックの点でも他の産地の追随を許さない。

シャトー・ラトゥールでは2001年に醸造設備を一新。その後も逐次最新の設備を導入しているらしく、20年ぶりに訪ねた醸造施設の中は大きく様変わりしていた。

ブドウや果汁を傷めがちなポンプを使わず、収穫から瓶詰めまで重力の方向に流れるように作業が進むグラヴィティフロー。コンピューターで一貫管理された温度調整式のステンレスタンクは、畑の区画の大きさに合わせて大小さまざまなサイズが並ぶ。当然、収穫したブドウをさらに選り分ける選果作業には、近頃流行りの光学式選果マシンを使っているのだろうと思いきや、今でも人手に頼っているのには驚かされた。

光学式選果マシンとは、ブドウの粒ひとつひとつをスキャンにかけ、大きさや色の濃さから瞬時に最良のブドウを選び抜く機械。人と違い何時間もの単純作業に耐えるからと導入するシャトーやワイナリーの増える中、今でも熟練の女性作業員に任せているところに、シャトー・ラトゥールの矜持が感じられるではないか。

テロワールのイイトコドリとテクニックのイイトコドリ。シャトー・ラトゥールのイイトコドリはそればかりではなかった。あのランクロの大部分をビオディナミ農法で栽培しているのだ。

ビオディナミ農法とは、オーストリアの人知学者、ルドルフ・シュタイナーの思想をもとにした栽培法で、大地を活性化させて病虫害に対する免疫力をつけ、テロワールのポテンシャルを最大限引き出すというもの。天体の動きに応じて農作業を行ったり、牛の角に詰めた水晶や鹿の膀胱に詰めたノコギリソウなど、自然界の物質で作られた調合剤を散布するなど、いささかオカルトめいてはいるけれど、偉大なワイン生産者の多くが実践し、実際に効果が表れている。

テロワールのイイトコドリにテクニックのイイトコドリ、そしてブドウ栽培のイイトコドリ。ここまで徹底したイイトコドリを見せつけられると、20年前と比べて5倍以上になったその価格もうなずくほかないのであった。

いいものを集めて編み直し、新しい「いいもの」をつくるということは、多用多面的に広がる暮らしをより豊かにするための知恵の進化なのではないだろうか。いま様々な世界のなかで、これからの名作となるような“イイトコドリ”が、多数生まれはじめている。

そんな“イイトコドリ”、クルマで言うと……

280馬力。7速DSG。四駆。先進テクノロジー。広さ。ユニークなデザイン。
そんな“イイトコドリ”なクルマ、それがArteon(アルテオン)。
そろそろクルマ選びも、こだわりや見栄に固執した、一点豪華主義みたいなのはやめません?
これからはこういうほうがカッコいい!!
フォルクスワーゲンのいいところ、ぜんぶ。
The New Arteon

シャトー・ラトゥールは「テロワール」と「テクニック」の“イイトコドリ”Byron(バイロン)で公開された投稿です。


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