皆様 こんにちは
12月に入り、寒い朝が続いておりますが、皆様、お元気にお過ごしでいらっしゃいますか?
風邪などお召しになっていませんか?
私は小さい頃から、「手を洗って、うがいしたの?」と呪文のように言われていました。大きくなり、車を運転するようになると、冬の朝は父から「ブラックアイスに気をつけて」といわれるのが日課になりました。わかっているし気をつけていますと、毎回思うのですが、それでも父は言わずにいられないようです。親ってありがたいですね。
さて、前回ギリシャの街々をご紹介して参りましたが、今日は南イタリアの小さな町、アルベロベッロとマテーラをご紹介しましょう。
「美しい森」というラテン語に由来する街、アルベロベッロはトゥルッリで有名な世界遺産都市です。
トゥルッリとは円錐型ドームの住宅のことで、南イタリア・プーリア州のムルジェ地方に分布している農家の建物です。トゥルッリは本来、田園に孤立して建つものなのですが、それが1430も集まって町を形成しているのがアルベロベッロなのです。

そもそもこの辺りは石灰岩や凝灰岩の層の上にあり、どこでもちょっと掘れば簡単に良質な石材がとれます。これをモルタルを使わずに空積みしたのがトゥルッリです。

15世紀の後半に当時この地方を統治していたナポリ王から、この土地を譲りうけたアックアヴィーバ伯爵が、森林伐採や穀物栽培のために、ここに農民の家族を呼び寄せ、共同体を作りました。
18世紀に入るとこの町は一層の発展を遂げるのですが、伯爵家にとって農民は伯爵家の富を成すための道具であり、農民が豊かな暮らしをすることはありませんでした。しかし、フランス革命の勃発により自由を求める気運が高まり1797年に自治の町となりました。

トゥルッリの特徴を挙げましょう。
・モルタルを使わず、支えも骨組みも利用せず石を積み上げただけの建物であること。
・この地域だけでとれる「キャンカッレ」という板状の石灰岩を7cmの厚さにし、屋根瓦として利用していること。

・壁の厚さが1~2mあることで、年間を通して内部の気温がほぼ一定であること。
・地下には貯水槽が作られていること。
・部屋の中を明るくし、害虫の侵入を防ぐため、漆喰が塗られていること。
・建物の頂上に「ピナクル」と呼ばれる小さな塔があること。
・屋根に石灰乳で描かれた災い除けのシンボルがあること。
下の写真の右奥の屋根には太陽とその太陽の中にIHSという文字が見えますか?
IHSはギリシャ語で「ジーザス」を意味するそうです。この他にもさまざまなシンボルが屋根に描かれています。

街ものんびり、玄関には花が飾られ、ネコも散歩しています。

次にマテーラをご紹介しましょう。 谷間に重なる洞窟住居群サッシです。

マテーラの歴史は新石器時代に始まっています。人々はカルスト台地の天然の洞窟を家として暮らしていました。
6世紀には北からやってきたランゴバルト族が交通の要衝であったこの地を占拠し、要塞化し、マテーラも都市化が進みました。
8・9世紀になると、イスラム教徒や偶像破壊主義者からの迫害を逃れたギリシャの修道僧たちがこの地にやって来て、岩窟住居を住処としたり、修道院としたりして、洞窟の用途がさらに広がっていったようです。
11世紀にはノルマン人が来て、都市としての機能を備えるようになると少しずつ洞窟住居は姿を消していきますが、バリザーノ地区とカヴェオーソ地区には都市化が訪れず、洞窟住居が点在していました。
16世紀には、ナポリ王国の支配のもとで商業や農業が繁栄し、人口も倍増します。しかしこの街の繁栄と人口急増の結果は、貧富の差を生むこととなり、裕福な人々は新しく生まれたピアーノ地区に住み、貧しい人々は岩窟に住むという社会構造ができました。
反宗教改革の追い風もあり、教会や修道院などが次々と建てられ、町は発展の一途を辿るのですが、岩窟住居には貧しい農民や労働者が住み続け、整備されない岩窟住居地区の居住環境は、ますます悪化し、どの家も大家族をかかえ、本来貯水槽や倉庫、家畜小屋として使われていた洞窟までもが住居として利用され、同じ一つの空間に大勢の家族が豚やロバ、ニワトリなどの家畜と一緒に暮らしていったのです。
マテーラの近くの村に流刑の身となって住んでいた画家であり作家でもあったカルロ・レーヴィの著書「キリストはエボリにとどまりぬ」でこの地が紹介されたことにより、イタリア全土に大きな反響を呼び、マテーラのサッシを「国の恥」とし、1952年に特別法が発布され、サッシ地区の住民が郊外の近代的な街へ強制的に移住させられました。
そして、サッシ地区は無人化してしまい、完全に廃墟と化してしまったのです。
しかし、近年、岩窟住居の歴史的遺産としての重要性が再認識され、無人のサッシ地区の荒廃をくい止めようと、住民を呼び戻そうとする動きが活発になり、文化活動や観光事業を促進し、住民を取り戻しつつあります。
そして1993年、「マテーラのサッシ」としてユネスコの世界遺産に登録されました。

この地が映画のロケ地として使われることも多く、日本でもキリストの受難を描いたメル・ギブソン監督の「パッション」という映画が公開されています。
洞窟は理屈抜きで聖なる空気を感じられるところだからでしょうか、岩窟住居の中には48の洞窟教会が建てられています。かつては貧しさの象徴とされていた岩窟住居も、現在は世界遺産ですから、1戸あたり3000万円以上すると伺いました。驚きですね。
次回はアマルフィ海岸をご紹介しましょう。 (あ)


